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Nr. 539 Juli 2026
今回は、女性政治家が抱える困難な状況が話題になっています。
政治家になりたい人は、どの価値のために力を尽くしたいのかを知っていなければならず、政治的な理念を持っていなければならず、さらに睡眠が少なくてもやっていけ、ストレスに強く、攻撃されたときにも冷静でいられる必要があります。とりわけ、人を好み、誰かに声をかけることにためらいがないタイプであるべきです。
ズーディングさん(Frau Suding)が2011年に政治家としてのキャリアを始めたとき、政治家は週四十時間労働ではやっていけないことは、彼女には明らかでした。当初、彼女は自分の任務を果たせるようになるために非常に多くのことを学ばなければなりませんでしたので、週80時間以上が必要でした。というのは、突然の再選挙が行われ、準備期間があまりにも短すぎたからです。彼女は、ハンブルク州議会の議席を得ただけでなく、議会で一度も議員を務めたことがなかったのにもかかわらず、いきなり会派を率いなければならなかったからです。
10年後、彼女は政治の世界から身を引きました。常に公の場に立ち、攻撃されることもあることが、余りにも負担が大きいと感じたからでした。彼女は自分の人生を取り戻したいと思いました。民主主義においては、政治家は有権者の質問やコメントに向き合わなければなりませんが、それは個人的な対話だけに限りません。今日では、主にメディアを通じて人々とつながることになります。そして彼女自身もそのような公の場を求めていました。しかしながら、人間としてはそれが彼女の心身に良い影響を与えず、多くのエネルギーを費やさなければなりませんでした。
政治家の61%は、これまでに言葉による暴力や身体的な暴力を経験したことがあります。そのような経験に対しては、暴力を防ぐために、それらの経験から力を引き出すことにより反応する人もいます。一方では、身を引き、政治の世界から退くことを考える人もいます。あるアンケート調査では、回答した政治家の20%が脅迫、憎悪それに敵意により、自分の政治的活動・関与を制限するようになったと回答しました。ほぼ四分の一は、特に公の場への露出や、論争を呼ぶテーマについての自分の発言を減らしたと答えています。
若い世代の政治家を対象とした別の調査では、女性政治家の半数以上が性別に基づく攻撃、例えば、性的な侮辱、レイプの脅し、容姿に関するコメントなどを受けた経験があることが分かりました。一方で、このような攻撃は男性政治家に対しては比較的まれであることも明らかになりました。
複数の調査によれば、インターネット上で遭遇する憎悪は、政治集会や街中で直接浴びる憎悪とほとんど同じくらい耐えがたいものであることが明らかになっています。そのような憎悪の結果、特に女性においては、彼女たちが身を引いてしまうことが多いのです。そのため、ドイツでは市長の内、女性は約13.5%しか占めていません。
ここ数年来、地方自治体ではそもそも女性候補者を見つけること自体がますます難しくなっています。政治家としてしばしば浴びせられる憎悪による精神的負担に加えて、多い仕事量からくる肉体的な負担ものしかかります。週五十時間労働はほとんどの政治家にとってごく普通であり、多くの人にとっては週七十時間労働さえも珍しくはないです。彼らには夜にも守るべき予定があり、それらはしばしば深夜に及ぶことがあります。さらに負担となるのは、政治家はいつでも、どのような話題についても報道陣に対して意見を述べる準備をしていなければならず、また他の政治家との協力関係を損なわないように、まったく異なる状況においても常に柔軟に適応し続けなければならないという点です。
この大きな負担は、多くの人が進んで受け入れています。なぜならば、多くの他の社会的活動におけると同様、彼らに非常に大きな力や動機付け、そしてある程度の「苦しみに耐える力(Leidens-Toleranz)を与えてくれる要因が存在するからです。政治家においては、このような要因は、仕事の意味とその際に経験する高い「自己効力感(Selbstwirksamkeit)」なのです。政治家は、国全体のためだけでなく、ひょっとすると日々その結果を目にすることができる地方政治の領域においてでも、さまざまなことを動かすことができます・・・。
さて、課題冒頭において、政治家を目指す人に必要な資質がいくつか挙げられています。それは、どの価値のために力を尽くしたいのかを承知しており、政治的な理念を有し、少ない睡眠時間でもやっていけ、ストレスに強く、攻撃されても常に冷静であり、人が好きで、人にためらいなく話しかけられる・・・、というものですが、スーパーマンのようなこれらの資質を満たさなければならない政治家とは何と過酷な職業だろうと改めて思いました。これらの資質はドイツの政治家であれば当然保有すべきものなのだろうと思いますが、一般的に言って、少なくとも日本においては多くの政治家にはそこまでは求められていないのではないかと思います。日本では日頃、不祥事・スキャンダルの報道がされる度に政治家に対しては厳しい視線が注がれることが多いですが、これらの資質を備えていないことの証拠ではないかと思います。一方で、少数かもしれませんが、これらの資質を備えている政治家に対しては日本では有権者としてはもっと敬意を払うべきだと思います。
ところで、ドイツでの女性市長の割合が13.5%で低いということが紹介されていますが、私が調べてみたところ、内閣府の資料(2024年7月)によりますと、日本ではさらに低く5.3%に過ぎないことが分かりました。また、ドイツ連邦議会においては女性の比率が約35%であるのに対し、日本の国会議員の女性は訳10%ですので、こちらでも日本の女性比率はドイツに比べ非常に低い状態にあります。
また、放送においては女性政治家が少ない理由が幾つか述べられていますが、増やす方策については、番組では言及されていませんでした。日本より女性政治家の比率が高いドイツで一定の効果を上げている「クオーター制」を日本においても導入した方がよいだろうと思います。ただし、ここで言う「クオーター制」は、憲法違反になる可能性のある議員数に対する女性議員比率を半数にすることではなく、立候補者の半数を女性にすることです。しかしながら、一気に半数にすることは摩擦も大きく、実現は難しいと思いますので、例えば、10~15年くらいかけて徐々に増やしてくような方策をとれないものでしょうか。実は、日本においても2018年施行の「政治分野における男女共同参画推進法」 が政党に対して男女の候補者数をできる限り均等にするよう努力するという「努力義務」が規定されていますが、実効が上がっていないようです。その理由は、この法律には「罰則なし、数値目標なし、努力義務のみ」とのことですので、効果が薄いと言わざるをえないようです。やはり、フランス、スペイン、韓国においては罰則を設けることにより実績を上げているようですので、日本も参考にする必要があるのではないかと思います。
ところで、8月18日付けのTop-Thema(Deutsche Welleが運営するドイツ語学習者向けの時事教材サイト)においても、今回の話題に関連した以下のタイトルとリードから成る記事が掲載されています。
Ehrenamtliche Bürgermeister am Limit
Bürgermeister im Ehrenamt haben es schwer: Sie arbeiten viel und erfahren immer wieder Anfeindungen.
「名誉職の市長たちは限界の状況にあります(疲弊しています)。名誉職の市長たちは厳しい状況に置かれています。彼らは長時間働いています、また度重なる攻撃も受けています。」
衝撃的だったのは、記事にはさらに、調査対象となった1,700人のほぼ40%(!)が、自分自身または家族が職務のために侮辱や脅迫を受けた経験があり、そのために辞任を考えた人もいたことを伝えています。この記事を読んだとき、今回の課題と放送で触れていた「政治家の長時間労働や度重なる攻撃」と内容が重なるところがありますので、ドイツでは現在、これらが話題になっているのだろうと想像します。また、常々不思議に思っていることなのですが、何故ドイツでは名誉職市長が存在し、機能しているのだろうかということです。日本では考えられない制度だと思いました。
また、今回話題になっている政治家に対する誹謗・中傷ですが、その対策については番組内では言及されていなかったようです。日本でも、政治家に対してだけでなく一般人に対する誹謗・中傷・暴力は近年確実に増加傾向にあり、特にSNS上での虚偽情報・人格攻撃・侮辱が深刻化しているようです。この対策として法整備も徐々にされつつありますが、まだ不十分といわれています。8月中旬の新聞報道によりますと、政府はさらなる改善を検討中であるとのことですので、期待したいところです。
K. K.