Kommentare zu
Nr. 519 Juni 2024
さて、今回は「親の介護」が取り上げられています。
„Direkt aus Europa”の519号の「宗教と社会から」(„Aus Religion und Gesellschaft”)というシリーズ番組においては、子供が両親に対してどのような責任を負うべきなのかについて議論になりました。もちろん、小さな子供はその両親に従順であるべきですが、この放送においてはそういう議論ではなくて、その両親が既に高齢者になって、ますます助けを頼りにされているようになっている成人としての子供の責任について議論になっていました。
この番組ではある女性の名前がフルネーム、つまりファーストネームと姓または家族名では表示されておらず、彼女のファーストネームだけが表示されています。しかもこのファーストネームはひょっとすると、彼女の実際のファーストネームではなく、彼女がどこの誰かが特定されないように、この放送のために選んだファーストネームに過ぎないかもしれません。なぜならば、彼女は両親とは既に7年間も関係を絶っていたからです。そして両親との関係を絶つことは、多くの人にとっては道徳的にみて非常に非難すべきものと映るからです。彼女は当時おそらく40歳台初めだったかもしれません。彼女は長い間、両親とは親密な関係ではありませんでしたし、二三ヶ月おきにしか訪れませんでした。両親の家にいると、そこは冷たい雰囲気だと感じましたし、母親に嫌われていると感じていました。
ある日、彼女は連絡を絶つことを決意し、両親にこれを伝えた時、彼らの反応はわずかに肩をすくめ、目をちょっとぴくぴくさせ、少しの涙を流しただけでした。彼女の父親は、両親がそれを受け入れる必要があると言いましたが、ジルケさんにとっては、強烈な罪悪感を伴いました。なぜなら、彼女は両親に命を助けてもらったと感じており、両親は長年に亘り彼女を育て上げ、いつも彼女のために費用をすべて支払ってくれたからです。
彼女はいつも両親のことが頭から離れず、彼らがどうしているかを知りたいと思っていました。特に彼女にとってつらかったかもしれないことは、父親が亡くなったことをある日どうにかしてひそかに知り、もう彼とは話すことができなくなることだったでしょう(幸いそれは起きませんでした)。それに対して彼女は大きな不安を持っていました。そして彼女は7年後、自ら両親に再び連絡を取り、仲直りました。
聖書に記された10の戒律は、キリスト教の倫理の基盤を形成するだけではなく、キリスト教ではない人々にとっても人間関係を規定しています。第4の戒律によれば、父と母を敬うことが求められています。しかしながら、あるカトリックの神学者は、これは上位者を敬うのとはちょっと異なると解釈しています。自分の親の場合、彼らに対しては、ただ敬意をもって扱い、彼らの尊厳を尊重することが重要であるといいます。また、しかしながら神学者は、両親の名誉を過大に高めることではないと付け加えています。自分の両親を尊敬と敬意をもって扱う人は、彼らが自分に期待できることにも限界があることを受け入れてもらえると考えています。なぜならば、彼にだって自分自身の人生と自分自身のニーズ・欲求があるからです。
セラピストのケーニッヒさん(Frau König)は、第4の戒めが多くの人々や多くの家族に多大な災いをもたらす教義だと考えています。また、暴力を振るう親も存在し、彼らを敬うことはまったく適切ではないといいます。自分の両親と良好な関係を築いている人にとっては、お互いに一定の結びつき・連帯感や心づかい・配慮を持つことは自然であり、戒律を全く必要としないといいます。生まれることについては、人は何もできないとされていますし、それに対して両親には何の義務もないといいます。
ランバースさん(Frau Lambers)は、社会教育学者です。彼女は「両親が突然高齢になったとき」(Wenn die Eltern plötzlich alt sind)というタイトルの本を執筆していますが、長年に亘り、高齢の両親との接し方についてのセミナーも行っています。なぜならば、高齢者はますます多くの支援を必要としており、高齢の両親はこの支援をしばしば子供たちに期待しているからです。
しかしながら、それは成人した彼らの子供たちが多くの時間とエネルギーを費やすことになり、彼ら自身は何かを諦めなければなりません。そして、その結果、自分の親に本当にそれを負うべきなのか、また、両親は子供たちを育てたことにより、それを得たことが当然なのかという疑問が沸きます。
自分の高齢の両親の世話をすることは、以前と違ってもはや当然のことではありません。なぜなら、就労可能年齢における全女性の4分の3、そして同じく全男性の84%が仕事をしていますし、介護のための休暇は最長6ヶ月は保証されますが、介護が必要な期間は平均して8.2年も続くからです・・・。
さて、テキストにも記載がありますが、親の介護は40~50歳台で発生することが多いですが、その頃は成人した子供は人生をうまく整え、別の街に引っ越し、おそらくは自分の家庭を持ち、キャリアを築いています。親との関係は、週に一度親の元に訪れる人もいれば、イースターやクリスマスだけ訪れる人もいます。親との関係がどれほど親密かによってだけでなく、私の想像するところでは、それに加え、両親の健康状態がどのような状況なのか、兄弟姉妹が何人いるか、両親の暮らしている街とどれくらい離れて暮らしているか、多忙な仕事をかかえているか否かなど様々な要因により両親の元を訪れる頻度も変ってくるだろうと思います。
さて、放送・課題に登場するジルケさんの場合、両親のいずれかが介護が必要な状態と思われますが、どの程度の介護等級なのかは不明です。また、ジルケさんが両親とどれくらい離れて住んでいたのかも分かりません。さらに、またジルケさんには兄弟姉妹はなく、一人娘なのでしょうか、両親の世話を一人で抱え込んでしまっていたのかもしれません。ただ、テキストによりますと、元々両親との関係は薄かったようですし、両親を二三ヶ月おきにしか訪れていなかったわけですから、実際にはジルケさんが両親の世話のために多大の時間、労力を割いていたとは私には考えにくいです。ジルケさんは恐らく「母親からは嫌われている気がしている」→「両親を訪ねたくない」→「ますます母親からは嫌われている気がする」→「だから両親を訪ねたくない」という負のスパイラルに陥ってしまったのではないでしょうか。しかしながら、そのような両親に対する気持ちを抱きながらもジルケさんがいざ両親との連絡を絶つことを宣言し、「親を棄てる」となると、その決断をするまでには相当な葛藤があったと思います。そして、実際に親に自分の決断を伝えるシーンは印象的でした。ジルケさんはその後も常に罪悪感に苦しんだようですので、7年後に仲直りができたのは本当に良かったと思います。仲直りを経ての現在、ジルケさんと両親はどのような関係を保っているでしょうか。良好な関係であって欲しいと思います。
ところで、ランバースさんの書いた「両親が突然高齢になった時」(„Wenn die Eltern plötzlich alt sind”)というタイトルの本ですが、調べてみたところ、2016年8月に出版され、„Wie wir ihnen helfen können, ohne uns selbst zu überfordern”(「私たちが過大に背負い込まずに、どのように両親を助けることができるか」という副題がついていました。私がドイツ・アマゾンでチェックした限りにおいては、この本は読者の評価がかなり高かったようです。この本は、高齢の親の介護に直面する成人の子供たちに向けた実用的なガイドで、親の介護が物理的および感情的にどのような負担になるかを説明し、この解決策を見つけるためのヒントや視点を提供しているようです。発売以来どれくらいの部数が販売されたかについては調べられませんでしたが、現代のニーズに合致していると思われますので、相当数売れたのではないかと思います。
今月の課題に取り組み始めた7月初旬の時点では従来通りだったと思いますが、何かの切っ掛けでホームページを閲覧したところ、Direkt aus Europa auf Deutschのホームページの体裁・外観が一新されていることに気がつき、新鮮な驚きを感じました。内容が変ったわけではありませんが、慣れるまでには少し時間がかかりそうです。しかしながら、Deutschlandseminarをクリックしたところ、従来通りのVergleichende Landeskunde(日欧比較文化演習)のページにたどり着き、安心しました。
K. K.