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Nr. 524 November 2024
さて、今月は「休憩・休息の重要さ」について取り上げられています。
„Mach mal Pause, trink Coca-Cola!” (「ちょっと一息ついて、コカ・コーラを飲んでね!」)は、1955年の広告のスローガン・キャッチコピーです。休憩はかつて生活の一部として当然のものでしたが、70年~80年前、人々は休憩がいかに重要かについて考えるようになりました。多くの人々は休憩を時間の無駄だと考え始め、時間を失いたくないと思っていたからです。しかしながら、既に150年前にドイツでは初めての休憩規定が存在していました。書籍印刷業者は雇用主と、午前中に15分の二度目の朝食時間と、午後に同じく15分の休息(Vesper)とを取ることについて合意しました。
カトリック教徒にとって、「夕べの祈り」(Vesper)は一日の最後から二番目の祈りの時間です。しかしながら、そこから派生して、午後にコーヒーや紅茶を飲みながら、甘いものを添えて、ひょっとしたらケーキを食べる休憩時間も指すようになりました。仕事中に最も重要な休憩時間は、もちろん昼休みです。そして、50年前になってようやく導入された全く新しい休憩が、殆どの時間を画面を見て仕事をする人々のための1時間に5分間の「画面(ディスプレイ)休憩」(Bildschirm-Pause)です。
労働時間中の休憩は規定される必要があります。しかしながら、大抵の休憩は自然に生じたり、または疲れを感じてちょっと休憩しようと決めたりすることで生じます。S1(Sバーンの1号線)に乗ってしばしば湖の一つへセーリングに行くベルリン在住のある女性にとって、電車での彼女の乗車時間は休憩・休息です。なぜならば、この乗車時間はとてもリラックスできるからです。これは車窓から景色を眺めることができるすばらしい区間です。彼女は大抵は、道中で音楽を聴いていますし、何もしないで単に20分座っていることを楽しみます。机に向かって座るのは彼女にとっては仕事ですが、Sバーンにおいて(座っていることで)彼女は別の世界にいます。
しかしながら、自宅においてもこのベルリン在住の女性が電車の中で楽しむような休憩〔息〕に似たような形で楽しむことができます。多くの家には暖炉があり、そこで火を焚くことができます。誰もいないときには、暖炉の前のソファーに横になり、テーブルに足を乗せて、ただ火を眺めるだけです。そうすると、時間を忘れてしまいます。クリスティーネ(Christine)は、この番組の放送作家の友人の一人の名前です。彼女は医師であり、シングルマザーです。
彼女にとって問題は、休憩を取るべき時にそれに気づかないことがしばしばあることです。
彼女は、特に忙し過ぎる時には全く休憩を取らない傾向があると言っていました。そのため、彼女は意識的に休憩を取るようにしなければならないことがしばしばあるとのことです。彼女は一般的な忙しさに巻き込まれているように見えます。ラジオにおいてさえも、放送の合間にあった休憩の合図が廃止されましたし、テレビにおいても何も放送がないときに表示されていたテストパターンをもはや見ることはなくなりました。
コーナースマン教授(Professor Konersman)は、休憩は日常生活とは対照的であることが重要であると思っています。彼が仕事をするときは、大抵は机に向かっています。軽い庭での肉体労働は彼にとって別の世界への切り替えとなります。彼の著書「世界の不安」において、何世紀にも亘り不安がどのように現代の生活を決定する動機となったかを調査しています。ストア派の哲学者および他の古代の哲学者たちは、無為、余暇および退屈それ自体を賞賛していました。しかしながら、現在では、余暇を楽しみ、何もしないことは(たとえ退屈であっても)、創造的で生産的に作用することが期待されています。
不安というものはかつて、人々に対し静寂を乱すものでしたが、今や肯定的に解釈し直されています。「休めば体にさびがつく」(„Wer rastet, der rostet.”)ということわざがあります。ガイスラー氏(Herr Geißler)は、多くの人々にとって休憩は今日もはや二つの活動の間の区切りでしかないと考えています。しかしながら、実際には、休憩は、生活の重要な一部であるといいます。しかしながら、多くの人々は休憩について考えるとき、そこまでは全く考えないといいます。私たちは自然のリズム、特に活動と休息の交替から切り離されつつあります。その際、休息をとることで初めて生活が実感できるとのことです・・・。
ところで、今回の課題および放送において、休息の例として、暖炉で火を焚きながら、暖炉の前のソファーに横になり、テーブルに足を乗せて、ただ火を眺めると、時間を忘れるという描写がありますが、このシーンは容易に私にも想像できますし、理解できます。一方で、ベルリン在住の女性がセーリングに行くときSバーンに乗車し、そこで音楽を聴きながら車窓から景色を眺めることがリラックスできるので、座っていること自体が楽しいとのことですが、こちらは私にはちょっと想像しにくいです。私が同じような状況・環境に置かれた場合、本当にリラックスできるかどうか分かりません。少なくとも東京の公共交通機関に乗車している場合、空いた車両に乗り合わせて外の景色を眺めても、とてもリラックスできるとは思えません。
さて、ドイツでは50年来、書籍・印刷業界でBildschirm-Pauseが導入されていることを私は今回初めて知りました。私は1986年~1991年にドイツの日系企業で勤務していましたが、このことは全く知りませんでした。書籍印刷業界に限定されて導入されていたということですので、私が勤務していた販売会社においては見たり、聞いたりしていなかったとしても不思議ではないのですが、私の同僚だった皆さんの中にも、例えば、コンピュータを使って長時間データ処理をしていた人々もいましたので、彼らにもBildschirm-Pauseが必要だっただろうと思います。実際には彼らも自主的に休憩・休息を取っていたかもしれませんが・・・。
今回課題に登場する1955年のドイツにおけるコカ・コーラのコマーシャルをインターネットで検索してみましたところ、動画も確認できました(こういう場合インターネットは非常に便利だと改めて思いました)。この時代はドイツにおいては、いわゆるWirtschaftswunderと呼ばれる経済成長期です。第二次世界大戦後の復興期であり、急速な工業化と経済成長をしたと言われています。また、同時にアメリカの文化や消費文化もドイツの消費者に影響を与えたようですので、コカ・コーラはその象徴的なものだったのだろうと思います。そのような時代で使われた„Mach mal Pause, trink Coca-Cola!”というキャッチ・コピーはこの時代の消費者の心を巧みにつかんだものと推察されます。後から出てくる „Wer rastet, der rostet.”とは異なり、韻を踏んでいるわけではありませんが、実際に声を出して言ってみますと、語呂が良く、妙に耳に残る印象があります。コカ・コーラのこのキャッチ・コピーは大成功だったのではないかと想像します。
課題および放送に出てくる„Wer rastet, der rostet.”ということわざは今回初めて知りました。韻を踏んでいるところが二カ所(werとder、rastetとrostet)あり、リズムがよく、記憶に残りやすいと思いました。また名詞のRastおよびその合成語であるRasthaus、Raststätteは知っていましたが、rastenという動詞があることは知りませんでした。Rastenについて調べてみますと、手元の独々辞典にはbes. eine Reise, Wanderung o. Ä. unterbrechen, um auszuruhenとの記載があり、名詞のRastの例文としてDie Wanderer machten eine Stunde Rast.という例文がありました。「休憩、中止、中断」を表すPause(例えば、Mittagspause, Kaffeepause)とは使われる場面やニュアンスがちょっと異なるのでしょうか。また、Pauseの動詞形としてのpausenは無く、pausenは、eine Landkarte pausen(「地図をトレースする」)のように「透写する、トレースする」という別の意味でのみ存在するようです。
ところで、「休憩・休息」がテーマの今回の課題および放送を通じ、厚生労働省が推奨する「プラス10」と「ブレイク30」という健康増進プログラムを思い出しました。「プラス10」は、日常生活に10分間の運動を追加することを推奨するものですが、今回の課題および放送の休憩・休息により深く関係する「ブレイク30」を簡単に取り上げたいと思います。「ブレイク30」とは、30分以上の座位を避けるための指針です。長時間座り続けることは、健康リスクを高める可能性があるため、30分ごとに立ち上がり、軽い運動やストレッチを行うことを推奨しています。例えば、仕事中に定期的に立ち上がってストレッチをする、水分補給のために歩くなど、短時間の休憩を取り入れることで、健康維持と生産性向上がはかれることが期待されるといいます。私自身もこれを知ってからは、それ以前にくらべると頻回に(ただし30分毎とまではいきませんが)パソコンの前から離れるようになりました。日本人の一日の平均座位時間は、世界最長の7時間という結果がシドニー大学などオーストラリアの研究機関の調査(2020年)で判明したとの記事を読んだことがありました。長時間座り続けることで血流や筋肉の代謝が低下し、心筋梗塞、脳血管疾患、肥満、糖尿病、がん、認知症など健康に害を及ぼす危険性が指摘されているようです。今回の課題および放送を通じて改めて私自身も「ブレイク30」を心がけたいと思った次第です。
ところで、今回の課題および放送とは関係が無いのですが、ずっと気にかかっていたことがありますので、質問させていただきます。私はインターネットで時折、ARDのtagesschauを見ています。番組の始めにHier ist das Erste Deutsche Fernsehen mit der tagesschau.という音声が流れます。これは、「ドイツ第一テレビのニュース番組『ターゲスシャウ』です」という意味だと思いますが、ここで使用されているmitの意味がよく分かりません。手元の辞書で調べても、上記のmitと同じ意味と思われる辞書の記載が見つからず、意味が明確ではありません。強いて言えば、下記の7.「(付帯)~という性質・内容を備えた」が近い気がしないでもないのですが、どうもしっくりきません。このmitについて教えていただければと思います。
1.(仲間)~と一緒に 2.(相手)~と 3. (道具・手段)~で 4. (包含)~を含めて 5. (素材・材料)~を使って 6. (携帯・装着)~を持って 7.(付帯)~という性質・内容を備えた 8. (様態・状態)~で 9. (同時)~と同時に、~歳の時に 10. (経過)~の経過と共に 11.(関係・関与)~に関して 12.(意味上の主語・目的語を表して、しばしば形式的なesと)
さて、時の経過は速いもので、今年も残すところあと10日余りとなりました。石山先生には今年も大変お世話になり、ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。
K. K.