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Nr. 525 Dezember 2024
さて、今回は「介護施設の入居者への暴力」が取り上げられています。
オーバーバイエルンのシュリールゼー(Schliersee)の近くで観光客には牧歌的な風景のように見えるところにある老人ホーム(「高齢者向け高級居住地」⦅”Seniorenresidenz”⦆と称されていました)が、所轄の郡長によって閉鎖されました。理由は、入居者が放置され、一部は十分な食事さえも与えられていなかったからです。40回の検査・査察では、おそらくこの問題が検査官・査察官には特別気づかれることもありませんでした。入居者は連邦軍の兵士によって避難させられ、他の施設に振り分けられました。その後、郡長はバイエルン州政府に報告書を要請しましたが、その報告書には2019年にバイエルン州内の更なる173の施設においても同様の問題があったことが記載されていました。
しかしながら、そこでは余り対策が講じられませんでした。介護施設の状況に批判的に取り組んでいるある批評家は、そのような状況の責任はすべての市民にあると考えています。たとえ深刻な欠陥が明らかになっても、それに対し誰も関心を持たないといいます。しかしながら、それが刑務所の場合はちょっと違います。刑務所で囚人が損害を被ったり、自殺したりすると、それは重要な問題となり、テレビにおいて、例えば30分のニュース番組である、ARDの”Tagesthemen”において報道されるといいます。それが原因でその刑務所所轄の法務大臣が辞任することもあり得るといいます。
ある介護施設でそのようなことが起こっても、憤る理由にはならないといいますし、過去数十年の間に、いくつかの介護施設のひどい状況のために保健大臣が辞任したことがあるかどうかという修辞的な質問が出されます。これは情報を得るための本当の質問ではなく、そのようなことは一度も無かったことを指摘するための修辞的な質問です。彼は、同情や共感には序列があり、そこでは高齢者や認知症の人々はかなり低い位置にいるという印象を持っています。
オーバーバイエルンのその高齢者施設がどのような状況だったのかは、入居者がほったらかしにされるだけではなかったのにもかかわらず、長年見過ごされてきたと思われますし、彼らは言葉や身体的な暴力も受けていました。これは介護施設においては広く見られる問題です。2017年のあるアンケート調査によると、質問を受けた介護サービスの責任者の内47%が、施設内での暴力の使用が特に重要な問題であると回答しました。しかしながら、殆どの入居者がまだ家族の訪問を受けているにもかかわらず、その問題に対しては殆ど対応がなされていません。2017年のアンケート調査では、質問を受けた介護職員の四分の三が、同僚による介護施設の入居者に対する言葉の暴力を目撃したことがあると回答し、半数以上が同僚による入居者のひどい放置を目撃したことがあると回答しました。
介護施設の多くの入居者やその家族も、これに黙って耐えています。なぜならば、彼らは、苦情を言うと入居者がさらに悪い扱いを受けるのではないかと恐れているからです。殆どの人々は苦情を言う勇気がありません。そうではない事例として、この放送の中でマルティナ・マンと名乗っているノルトライン・ヴェストファーレン州のある女性がいます。彼女はそう名乗っていますが、ラジオで本名が知られるのを避けたいからです。家族は母親のために本当に良い施設を見つけるために大変な努力をしました。
そこにはある管理者がおり、そのもとですべてがとてもうまくいっていました。しかしながら、その後その管理者が交替し、問題が発生しました。母親が立ち上がれなかったある時期に、ある日彼女には青あざがありました。娘が介護職員にそのことを話すと、彼らは、母親が何かにぶつかったのだと言いました。しかしながらそれはあり得ないことでした。なぜならば、母親は殆ど動けなかったからです。青あざが肋骨や首にできるのは、どこかにぶつかった場合ではありません。母親が娘に語るところによれば、母親はベッドで急に引き上げられ、その際に非常に強く掴まれたとのことでした。母親はなすすべがありませんでした。これを聞いた時の娘の無力感は本当にひどいものでした・・・。
さて、今回のテーマに関しては、課題および放送において衝撃的な調査結果が紹介されています。ドイツの2017年のあるアンケート調査によると、質問を受けた介護職員の四分の三が、同僚による介護施設の入居者に対する言葉の暴力を目撃したことがあると回答し、半数以上が同僚による入居者のひどい放置を目撃したことがあると回答しました。当時から介護施設における言葉の暴力や放置が広く蔓延しているようですが、アンケート調査から8年経過しているドイツでの最新の状況はどうなっているのでしょうか。また、別の最近の調査によりますと、入居者の介護を行っている介護職員の三分の一が翌年中には他の介護施設に移りたいと考え、9%が介護職員を完全に辞めたいと思っているとのことでした。介護職員に対する待遇の不満や業務でのストレスなどが原因なのでしょうか。介護職員がストレスを受けていることに関しては、次の厚労省の調査結果でも明らかになっています。
ところで、今回の課題に取り組む数日前にたまたま、2025年1月5日付け日本経済新聞夕刊で「2023年度(2023年4月~2024年3月)に介護職員が高齢者を虐待した件数が1,123件に上り、3年連続で過去最多を更新した」という厚労省の調査に関する記事が目に止まりました。1件で複数の被害者がいるケースもあり、被害者は計2,335人。うち5人が死亡したとのことでした。介護職員による虐待の種別は、暴力や身体拘束といった身体的虐待が51.3%で最多とのことです。暴言な どの心理的虐待が24.3%、 長時間放置などの介護放棄が22.3%と続いています。 発生要因は「虐待や権利擁護、身体拘束に関する職員の知識・意識不足」が77.2%と最多でしたし、次いで、「ストレスなど」(67.9%)だったといいます。介護施設における虐待、放置などの不適切な対応は、ドイツだけでなく、日本でも問題視されるようになってきていることが窺われます。実際に日本のマスメディアでもたびたびニュースとして取り上げられています。これに対してどのような有効な対策が考えられるのでしょうか。日本においては高齢化率が世界最高水準といわれ、介護施設への入居者が今後ますます増えることが予想されますので、喫緊の課題だと思います。
また、今回の課題および放送で触れていましたが、介護施設においてひどい扱いを受けても、報復を恐れて介護施設に対しに苦情を言えないということです。これはまさに異常事態だと思います。課題および放送に登場してくるノルトライン・ヴェストファーレン州のマルティナ・マンさんという匿名の女性は、母親に青あざができたことで施設に苦情を言ったところ、クレーマーとして施設への出入り禁止を申し渡される始末でした。また、彼女の母親の隣室の老婦人は、失禁対策の下着を着用させられ、トイレに行くことを禁止されていたことも衝撃的でした。また、Beiheftに記載されていた食事介助の状況は「虐待」であり、むしろ「拷問」に近いのではないかと思います。これらの事例は怒りを感じるだけでなく、恐怖さえも感じます。
この対策としては、例えば、介護職員に対する教育や訓練を強化し、適切なケアの方法や倫理について理解を深めてもらい、行政からは介護施設に対する定期的な監査・査察をきちんと行うことが求められるといいます。その上で、利用者や家族が匿名で苦情を申し立てることができる窓口を設置することで、報復を恐れずに問題点を通報できるようにすることも必要だろうと思います。これらですべてが解決できるとは思えませんが、改善の糸口にはなりそうな気がします。
ところで、今回問題になった高齢者施設から入居者を避難させるためにドイツ連邦軍が動員されたことに私は驚きました。日本では例えば、数日前、養鶏場において鳥インフルエンザの発症が確認され、80万羽超という鶏を殺処分しなければならなくなったため、自衛隊が動員されたようですが、高齢者施設からの避難の場合、普通は施設のスタッフ、消防、警察などが協力して行われると聞いて思います。日本では高齢者施設からの避難の場合、自衛隊の動員までは行わないのではないかと思います。
さて、最後になりましたが、今年も引き続きご指導のほど、よろしくお願いいたします。
K. K.