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Nr. 480 Februar 2021
今回は、「土地の個人所有の問題」が取り上げられています。
西部ドイツ放送(der Westdeutsche Rundfunk)がその第三ラジオ放送番組において日曜日の午前8時30分から9時に放送し、午後1時30分から2時に再放送しているシリーズ番組放送については、私たちは1年前の2月のDirekt aus Europa 468号において既に経験しています〔聞いています〕。それはまたブラウヴィンケルさん(Frau Burgwinkel)が担当する放送でした。そこで話題になっていたのは第一子であることの良い点、悪い点についてでした。日曜日のもう一つの他の放送は、ドイツ放送(der Deutschlandfunk)の2020年3月29日9時30分から10時に放送された番組です。そこでの話題は建物を建てることができる土地の所有権、それに森と畑地の所有権についてです。ドイツ基本法、つまりドイツ憲法ですが、その第14条にこう記載されています。「所有権は、義務を伴う。その行使は、同時に公共の福祉に役立つべきものでなければならない。」
所有権には土地所有・所有地も含まれます。そして、土地所有者は、その所有物が公共の福祉にも役立つことに配慮しなければなりません。米英仏の3つの連合国軍の占領地域からドイツ連邦共和国が成立する1949年以前に、すでに諸州が存在しており、バイエルン州には1946年12月8日に発効した州憲法が存在していました。それ以前にも1818年、1919年の州憲法が存在していました。1946年制定の州憲法第161条には「土地の分配と利用は州国家の定めるところとして監視される」と記載され、第106条には「バイエルン州のいかなる居住者も相応の住居に対する権利を有する」旨が記載されています。
リークさん(Herr Rieg)は、空気と土地は生活の最も重要な基盤であることを指摘します。そしてリークさんが引用するのは、ミュンヘン市の市長を1960年から1972年まで務め、またSPD党首を1987年から1991年まで務めたハンス・ヨッヘン・フォーゲル氏の言葉です。その言葉とは、2020年に亡くなったフォーゲル氏が、その前年の2019年に80ページに亘り、「土地は全く思うがままにできる商品というわけではなく、人間の生活の重要な基本的前提であり、人は土地については他の財産・所有物とは異なる扱いをしなければならない」という説明をしていましたが、このことを指しています。人は海から土地を手に入れることができます。しかしながらそれは極めて制限された範囲においてのみです。従って、すでに1972年にはSPD役員会が設置した土地法改正のための委員会は、所有地の収用〔公用徴収〕のための手続きを迅速化すること、自治体の先買権、都市計画により発生する価値上昇を土地所有者に与えるままにしないこと、賃料の上昇により発生した地価の収益に課税することなどを要求していました。
魚、鳥それに野生動物などの採取経済によってだけでは人間は既に長い間生計を立てることができません。人間には植物が育つ耕地が必要です。十分広い土地があるところでは、一つの土地を選び出し、そこに家を建て、残りの土地を耕作し、それにより生計を立て、さらには少々の物々交換にも使います。一つの土地を誰かから賃借りすることや賃料を支払うことは、誰も思いつかないでしょう・・・。
しかしながら、空き地がもはやなく、誰かが自分の家族を養うために十分な耕作地を持っていない場合、土地を追加購入するために、非常に多額の金を支出しなければならないでしょう。なぜならば、それまでにこの土地に耕作地を持っていた者は、自分や自分の子孫が生活できるだけの多額の金を買い手から得なければならないだろうからです。そのような土地に対しては殆ど払い切れないでしょう。
この関連において、リークさんは1802年まで教会が所有していた土地のことを思い起こさせます。教会は自身の財産・所有物を失い、国家から損害賠償金を毎年受け取っています。しかしながらこれは続行すべきではありません。教会に対する国家の給付は一度で弁済するべきです。これについてはこの100年来交渉をしています。しかしながら、これは国家にとって非常に高価です・・・。
空き地・更地においては、不動産所有者が取得後転売するまでの間にその不動産の価値が維持されたり、しばしば上昇したりすることに対してほとんど何もすることができません。草原の有用性は普通、何世紀にも亘って変わりません。利益を伴うのちの売却を正当化できるものは何もありません。土地は他のいかなるものとも異なる財産・所有物です。すべての土地が王様や皇帝のものであり、領主たちはこれを単に借受けていただけという頃の昔の状態をリークさんは気に入っているように見えます・・・。
さて、今回登場するハンス・ヨッヘン・フォーゲル氏については、同氏がSPD党首を務めていたた期間(1987年~1991年)が、私がドイツで勤務していた頃(1986年~1991年)とほぼ重なり、日々のニュースで同氏の名前を見たり、聞いたりしていましたので、私にとって同氏はSPD党首という印象が強く他のイメージは殆どありませんでした。ところが、今回の放送内容・課題を切っ掛けに改めて同氏の経歴を調べてみると、約50年前の1970年代初頭からの政治家としての活動から、具体的には、ミュンヒェン市長、西ベルリン市長を歴任し、その後の中央政界においては建設大臣や法務大臣を務めたことから、土地・住宅政策に力を注ぎ、既に当時から今回と類似の内容の主張をしていた人物であることがわかりました。その意味ではフォーゲル氏には先見の明があったと言えそうです。また、同氏は長い間パーキンソン病を患った後2020年7月に死去しましたが、その死去の前年に出版した土地・住宅政策に関する書籍は、同氏の政治活動の集大成でもあり、現代に生きる人々への警鐘を含んだ遺言だったのではないかと思います。
ところで、数年前ギリシャ最大の港湾について中国資本の出資によりその関与を強めているというニュースを聞いた時にも大変驚いたものですが、今回の放送においては、リベリアの農作地がすべて外国資本となっているということやEUにおいてはすべての企業の内のわずか3.3%が過半数の土地を支配していることなど信じられないような内容が指摘されており、そのような事実があるとは私は知りませんでしたし、一層驚きました。
K. K.